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渋沢史料館館長スペシャルインタビュー-2-

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東京都北区

◆渋沢翁と北区について
▽渋沢翁は、飛鳥山の邸宅を別荘・本邸として過ごされました。なぜ飛鳥山という土地を選んだのでしょうか?渋沢栄一と王子・飛鳥山の繋がりというのは、抄紙会社(のちの王子製紙株式会社)の工場をどこに立地するかというところに始まります。
渋沢栄一自身、現在の都内各地を歩きましたが、先行して、鹿島万平(かしままんぺい)が動力用水を使っての紡績場を持っていたこともあり、結局のところは、条件が非常に整っているのではないかということで決めたのがこの王子の地でありました。
また、当時(抄紙会社創立は明治6年)、渋沢栄一は深川の方に住んでいましたが、明治10年頃に、いわゆる東京東部低地帯でコレラが大流行して、渋沢栄一の奥様が、できれば土地の高いところへ行って空気が乾いたようなところで生活したいと進言されたこともあり、抄紙会社の工場関係で、絶えず行き来していた飛鳥山の土地を買いまして、明治12年に別荘とし、明治34年から亡くなるまで本邸として飛鳥山に居を構えました。
明治初期は会社や工場のなるべく近くに住む風潮があった時代でもあったのです。渋沢にとって飛鳥山邸が終の棲家になりました。

▽渋沢翁と地元との関わり中で印象的なエピソードはありますか?
非常時のお話になりますが、大正12年関東大震災の際、渋沢栄一は日本橋兜町で被災しその後、車でこの飛鳥山まで辿り着きました。当時、渋沢栄一は83歳。息子たちは栄一を心配して、「老体なのだから、深谷へ退いたほうが安全ではないか」と説得しましたが、栄一は「こういう時に動くために私は長生きしている」のだということを言い、率先して、各所の救護所を巡って積極的に支援を行いました。
地元の方にも、飛鳥山邸の日本館の大きな書院を提供して、埼玉から食料や毛布などを取り寄せ、被災者のための食料供給本部として提供しました。残された記録からは、綺麗な屋敷が役所の倉庫のようになり、また、泥にまみれても惜しみなく提供してくれた渋沢栄一に対して恩義を感じているといった思いも伝わってきます。こういうエピソードは、地元のためにというような思いで率先して行った事例なのではないかと思います。
そのほかにも、学校の建設・滝野川警察の庁舎を建てるという際にも、少なからず資金を提供しています。
また、飛鳥山の先の一里塚保存に尽力したのも渋沢栄一です。伝統的な文化をきちんと受け継がなければならないという思いから、渋沢栄一のみならず、その先に住んでいた古河さんも資金提供をし、その碑を守るために土地を買い、飛鳥山公園の付属地として使うべく寄付をしました。
以上のように、この土地において産業を興し、そして文化を保護したというエピソードはいくつか残されています。自分も地域の住民なのだという意識を持って、現地の人たちと非常に多くの交流をしていました。

▽実業家としての渋沢翁について、その人柄がにじみ出るようなエピソードがあれば教えてください。
実業家としては、実際の経営指南というよりは、方向性を間違いなく進めてもらえるように、後ろからの指導をしていたというところがあります。
その時に戒めの言葉として使っていたのが、「すぐ目の前の成果をあまりにも求めすぎるな」「自分の利益をまず第一に考えるな。」といった意味の言葉です。自分が豊かになりたいとか、すぐに成果を得たいというような思いは、皆が持ちたがるものですが、そのような思いを心の中に描いてしまうと、間違った道へすぐ進んでしまうことがよくあります。そのような時には、折角のいい事業であっても長続きするものではありません。
まずは、立ち上げた事業をしっかり根付かせること、そのためにはどのような想いに基づき、正当な利益を求めるかということをしきりに言っていました。
やはりそのような点から、渋沢栄一らしい真骨頂が伝わってくるのかと思います。

◆渋沢史料館リニューアルオープンについて
▽3月28日にいよいよリニューアルオープンを迎えますね。ズバリ見どころはどんなところでしょうか?
今度の展示は、今までの常設の内容とはガラッと趣を変えています。
これまでは、社会福祉事業、民間の立場での国際交流・国際親善、教育の分野といった分野ごとで描いてしまいがちでしたが、今度の展示は、渋沢栄一が生まれてから91年、1年1年何をやったのか、その時の社会状況も見据えつつ同時にいくつもの事業に関わっている、というようなところをお見せしたいと思っています。
これが本当の渋沢栄一の姿、というところになりますね。

▽展示以外で企画されていること(イベント・講座等)の予定はありますか?
渋沢史料館としてではありませんが、財団としては渋沢栄一の「論語と算盤」のセミナーを開催し、また、読書会という形で実際にみなさんと共に内容を読み、現代の生活の中にどう活かしているのかということを議論しあうような会をずっと結んできておりますので、それを取り上げるようなイベントを考えています。
それから、今回お札の肖像に決まったことや、大河ドラマの主人公に決まったことに関連して、様々なイベントができればと……、そんなことも密かに目論んでおります。

◆渋沢史料館基本情報
所在地・電話:〒114-0024 西ケ原2-16-1(飛鳥山公園内)【電話】3910-0005
開館日時:3月28日よりリニューアルオープン
 開館日:火曜~日曜
 開館時間:午前10時~午後5時(入館は4時30分まで)
 休館日:月曜(祝日と重なる場合は開館)・祝日の代休(祝日後の最も近い平日)・年末年始(12月28日~1月4日)
入館料:
・一般 300円(240円)
・小中高生 100円(80円)
※( )内は団体20名以上の料金

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