〔Profile(プロフィール) 山田真樹(やまだまき)〕
1997年6月7日生まれ。北区在住。北区ゆかりのアスリート。
初出場のサムスン2017デフリンピックで、200m、4×100mリレーで金メダル、400mで銀メダルと計3個のメダルを獲得。さらに、2024年の第5回世界デフ陸上競技選手権大会で、出場した4つの種目すべてでメダルを獲得。日本のデフ陸上界の「顔」と言われている。
また、フジテレビ『silent』、舞台『聴者を演じるということ序論』、NHK『手話劇!夏の夜の夢』に出演するなど、「表現者」の一面も持つ。
■開催まであと318日!東京2025デフリンピック
北区在住でデフ陸上競技選手として活躍されている山田真樹選手。今年開催される東京2025デフリンピックや北区への思いなどを伺いました
〔やまだ加奈子 北区長〕皆さんが同じように生活できることを目指して
〔山田真樹 選手〕普段から「聴く」を使うようにしています
区長:本日はお越しいただきありがとうございます。2025年はデフリンピックイヤーですね。いろいろとお話を伺いたいと思っています。
山田真樹選手(以下、山田):よろしくお願いします。
◇東京2025デフリンピックに向けて
区長:東京2025デフリンピックは100周年の記念となる大会で、日本で初めて開催されますね。山田選手は大会参加選手の中でも特に期待されているお一人だと思います。現在の思いや決意をお聞かせください。
山田:1924年にパリで開催された第1回デフリンピック大会からちょうど100周年の節目であり、大変意義のある大会だと思います。応援してくださる皆さんの期待に応え、恩返しをしたいです。また、この大会をきっかけに、日常生活の中に耳がきこえない・きこえにくい人がいるということを多くの方に知ってほしいと思っています。
◇耳がきこえない・きこえにくい人とのコミュニケーション
区長:私の父も身体障害者です。父は見た目でわかる障害なのでサポートの仕方が想像できると思うのですが、耳がきこえない・きこえにくい方は見た目でわからないことが多いですよね。サポートの仕方がわからない人も多いと思います。
山田:そうですね。わかりにくいですよね。特に僕の場合は母がイギリス人ですから、外国人と思われることも多いです。例えば、僕が困っているとき、相手の人は僕の顔を見て外国人だと思って英語で話してくれるんです。耳がきこえないので、筆談でお願いしますと伝えることで、やっとわかってもらえるんですよね。
区長:それは、ダブルで難しいですね。
山田:音声が伝わらない…そんなときは、ぜひからだで表現するコミュニケーションを取ってもらえると嬉しいです。そのような非言語のコミュニケーションは耳がきこえない・きこえにくい人たちだけでなく、日本語がわからない外国人にとっても有効だと思います。
区長:確かに外国語も手話も「できない」と思うと一歩引いてしまいますよね。そこで、からだで表現して伝えようという気持ちが出てくると、コミュニケーションの壁は少し低くなるのかなと思います。
山田:一般的な「聞く」という字は、門構えに耳を書きますよね。僕は普段から「聴く」を使うようにしています。「聴く」という字には「耳」と「目」と「心」という文字が入っていますよね。
区長:そうですね。単に耳に入る音ではなくて、ちゃんと自分から心で聴いていますよということですね。
山田:そうなんです。ぜひ、アイコンタクトを取りながら、コミュニケーションを取ってほしいです。耳がきこえる人は自然と耳に音が入ってきますよね。僕はそれができないので、目を合わせて伝えてほしいです。相手を理解しようとする気持ち、相手も伝えようという気持ちがあって、初めてコミュニケーションが取れるのだと思います。
区長:とても良いお話ですね。耳がきこえる、きこえないに関わらず、コミュニケーションの取り方という意味で、このお話を多くの方に聞いてほしいです。
◇北区での思い出や印象
区長:今、北区に住んでいるとお聞きしました。本当に嬉しいです。北区に住むことになったきっかけや北区の印象などをお聞かせください。
山田:僕は生まれが文京区なのですが、北区は近いこともあり、子どもの頃に父がよく遊びに連れて来てくれたんです。飛鳥山公園にもよく遊びに来ていました。街の雰囲気もすごく落ち着きがあって、いつか住んでみたいという気持ちがありました。そして、実際に引っ越しすることになり、最初は滝野川、今は堀船に住んでいます。住み心地が良くて気に入っています。
区長:そう言っていただけて、嬉しいです。今回の撮影は昨年9月にオープンした「豊島五丁目グリーンスポーツ広場」でしたが、印象はどうですか。
山田:ようやくできたという嬉しい気持ちです。都内には陸上競技場の数が少ないので、選手として、可能性が1つ広がるきっかけになるという面で嬉しく感じています。
区長:ぜひ利用しに来てくださいね。次に、北区の行政サービスについても思うことがあればお聞きしたいのですが、どうですか。
山田:区役所の受付近くに手話通訳連絡所がありますよね。耳がきこえない・きこえにくい人への配慮が手厚いことがとてもありがたく、北区で生活しやすいポイントになっています。
区長:そう言っていただけて、とても嬉しいです。北区では、防災訓練に耳がきこえない・きこえにくい方も参加していただけるよう、手話通訳の方に参加していただくなどの取組を始めています。障害があってもなくても、皆さんが同じように生活できることを目指して頑張りたいと思っています。
山田:僕たちは補聴器をつけて生活をすることが多いので、もし災害が起こったときに補聴器の電池が切れてしまうと、全くきこえなくなってしまいます。そのような状況の中で、手話通訳の派遣などがあると、とても安心感があります。
区長:そうですね。北区は文字で伝えるボードの配置なども進めています。
山田:そのような配慮はすごく嬉しいです。
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