●ミステリー小説は内田康夫さんの作品から
区長:北区生まれの作家内田康夫さんの協力を得て創設された「北区内田康夫ミステリー文学賞」は今年度で18回目を迎え、これまでも多くの受賞者の方が、プロの作家として活躍されています。横山さんが、「北区内田康夫ミステリー文学賞」に応募しようと思った動機をお聞かせください。
横山:最初に読んだミステリー小説は内田康夫さんの作品で、内田康夫さんのほかの作品もたくさん読ませていただき、自分も書きたいなと思って小説を書き始めました。書くだけじゃ物足りなくて、自分を認めてもらいたかったのだと思います。そのときに公募を探して「北区内田康夫ミステリー文学賞」を知り、中学生くらいからは意識して取り組み、応募しました。
区長:受賞作品『秘密を夜に閉じこめて』のストーリーやトリックなどのアイデアは、どのように思い浮かんだのですか。
横山:これはタイトルが先に思いついて、もともと『秘密は夏に閉じこめて』というタイトルだったのですが、語呂もいいし響きもいいなと思い、そこからプロットをたてていきました。
区長:本のタイトルを決める時は、迷われるのでしょうね。受賞されてから、横山さん自身や、横山さんの周りでなにか変化はありましたか。
横山:びっくりしたのですが、授賞式の後に初対面の女性の方が頑張ってくださいと握手をもとめてきてくれたりとか、親の職場の人からお菓子の詰め合わせをもらったりしたんです。私の知らないところでも私の作品や名前が影響しているなと思うと責任を感じて、これからそういうことも心がけながら作品を一つずつ作っていかなければと思いました。
●クスッと笑える応募動機
区長:小学生の時に、「12歳の文学賞」に応募された動機を聞かせていただけますか。
鈴木:そうですね。小説を書こうと思ったきっかけと同じで、景品がほしくて、その景品目当てで最初は応募しようと思いました。
区長:2回目の応募の際はどうだったのですか。
鈴木:2回目の時はみんなに「次も応募するよね」と聞かれたり、審査員の先生から「このお話を連作として書いてみたら面白いんじゃない」とアドバイスをいただいたりして、あと母が審査員の先生のファンだったということもあって、書きましたね。
区長:三年連続の受賞は、すごいことですよね。受賞されてからは、どのような変化がありましたか。
鈴木:自分がほかの方の本を読むときに、言葉の選び方や句読点のつけ方にもっと意識して読むようになりました。
区長:『さよなら、田中さん』には、北区の地名などがでてきますが、小説の材料とするために、街を歩いたりお店探検したりされますか。
鈴木:たまに小説の気分転換で出かけることはありますね。
●物語の最後は淡い希望を匂わせて
区長:お二人の優れた文章力、語彙力、表現力には、こんなに若い方が書いたのかと、驚くばかりです。ストーリーの組み立てや方向性などで重点をおいていることはありますか。
鈴木:物語を書くときは、私が好きだからっていうのもあるのですが、最後まで読むと光を感じることができるような物語にしたいと思っています。
横山:バッドエンドっていうのもあると思うのですが、どれだけ辛いことがあっても最後には淡い希望があった方が読んだ人の生きていく上での希望になると思うので、私も最後には希望を匂わせて終わりますね。
区長:そうですね。やはり読んで沈んだ気持ちになるよりは、明るく晴れやかな気持ちになれたり希望を持てたりしたほうが幸せ感はありますよね。ちなみに、お二人はひと月にどれくらい本を読まれますか。
鈴木:中学校にあがってから忙しくなり、月だと10冊くらいですかね。数日に1冊のペースで読んでいるので、だいたいそれくらいだと思います。
横山:私はあんまりちゃんと読書するのが上手じゃなくて、途中でいろいろ考えちゃうんですよね。こういう展開か、自分だったらこうするな、とか。そういうことが多々あって、読書もけっこう遅読なんですよね。本当に気分屋っていうか、読みたい本を自分のペースで読んでいくので、あまり月に何冊とか数えたことないですね。
区長:お二人はジャンルも違うし、読み方のスタイルも違いますね。好きな作家や、最近読んだ一押しの本があれば教えてください。
鈴木:昭和文学が好きなので、志賀直哉や吉村昭が好きです。
横山:現代社会という教科を勉強していた際に『夜と霧』という本の存在を知って、あっ、これは読んでおくべきだなと思い、読みました。すごく価値観が変わりましたね。これは本当に誰しもが読んでおくべき一冊だなと思います。
区長:一押しの本と言えば、横山さんは、全国高等学校ビブリオバトル2018決勝大会に、東京都代表として出場されましたよね。その時は、どの本を紹介されたのですか。
横山:氏田雄介さんが書いた『54字の物語』という本を紹介しました。短編集ですが、ただの短編集じゃなくて、全ての作品が54字だけでできている、非常に面白い作りになっています。その作品の構造に魅力を感じて紹介しました。
区長:5分間の紹介で、より多くの人に共感してもらうためには、プレゼン力が必要ですよね。文学賞に応募するのとは、また違った刺激や魅力がありそうですね。
横山:そうですね。でも、自分の伝えたいことを伝えるという点では、プレゼンも小説も根本的には同じで、方向性の違いはあれど、自分の伝えたいことを一番に伝えるというそれだけの思いで頑張りました。
区長:鈴木さんは、昨年の10月17日に新刊『太陽はひとりぼっち』が発行されましたね。ストーリーのあらすじや、読みどころを教えてください。
鈴木:デビュー作『さよなら、田中さん』の続編です。前作では謎だった主人公花ちゃんのお母さんや賢人(主人公が住むアパートの大家の息子)の過去が明らかになります。「このあとどうなったか気になる」と多くの読者の方から言っていただいた三上くん(主人公の友人)の現在や、意外な人気で隠れファンもいるらしい、花ちゃんの小学校時代の恩師木戸先生の少年時代や兄弟のことが描かれています。
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